映画『Noise』公式サイト|松本優作初長編監督作品
NOISE ノイズ

監督コメント

高校生の時、友人が自殺した。

その事実を受け入れる事が出来ないまま、
2008年、秋葉原で無差別殺傷事件が起きました。

当時16歳の私にはとても衝撃的でした。
その事件をきっかけに、これまでに起きた無差別殺傷事件を調べていくと日本に限らず世界でも、このような事件がたくさん起きており、また事件を起こした犯人のほとんどが、過去に起きた大量殺人事件あるいは暴力的な復讐を描いた映画や小説を模倣する傾向があることがわかりました。

1999年に起こった池袋通り魔殺人事件の犯人の造田は、中上健次の小説「19歳の地図」の主人公と同一化していました。造田の逮捕後に部屋からその小説の一節を書き写したメモが見つかり、この事実に強く惹き付けられました。
事件を調べていくと、様々な要因が重なり合っていることがわかり、決定的な理由がなくても、偶然の出来事の積み重ねで大きな事件へと発展してしまいます。

いったい誰が悪いのか?

事件を起こした犯人だけが悪いのか?

社会が悪いのか?

私たちに非はないと言えるのか?

メディアは事件を起こした理由を明確にしたがる傾向があります。決定的な悪を決めつける事によって、視聴者の興味をそそろうとします。しかし、それは事件を単純化する事になり本当の事件解決にはなりません。

被害者、被害者の遺族、加害者になりうるかもしれない人、その場に居合わせたかもしれない人。様々な人々の視点から映画を制作していく上で、事件の真に迫ろうとしました。

ワンカットずつ役者やスタッフと話し合い、少しずつ答えを見つけながら映画の制作を進めました。その過程で主演の一人である篠崎こころさんと出会いました。彼女は中学生の頃に様々な困難に合い、絶望の淵にいました。

しかし、それでも彼女は秋葉原でアイドル活動をしながら、希望を見出そうと一生懸命生きようとしています。私はいつの間にか彼女を、私が中学生の頃自殺した友人と知らず知らずに重ね合わせてしまっていました。

自殺して亡くなった友人のためにも、彼女には生き続けてもらいたい。
そんな超個人的で一方的な思いも相まって、この映画を制作しました。

事件について、まだ自分の中で明確な答えは見つかっていないですが、この映画を観て頂いた方と一緒に考えて行けたらと思っています。

松本 優作

松本優作 Yusaku Matsumoto 
監督・脚本・編集・企画・製作
1992年10月9日、兵庫県神戸市生まれ。
ビジュアルアーツ専門学校大阪に入学し映画制作をはじめる。2008年、映画『Noise』脚本執筆開始、2017年完成124分版で世界各地の映画祭で正式上映、初監督作品となる本作を劇場公開に向けて再編集。本作に先駆け劇場公開された監督二作目となる短編『日本製造/メイド・イン・ジャパン』(MOOSIC LAB2018として)も、連日満席、観客賞・審査員特別賞・最優秀男優賞の三冠受賞。本年はさらにネパールでの撮影が決定しているMOON CINEMA PROJECT 2018グランプリ受賞企画『バグマティ』で初のドキュメンタリーに挑む。映画と同時に、レクサス 、三井住友カード、富士通などの広告作品やSchroeder-HeadzなどのMVのディレクションも手掛ける。